【利用者を増やす㊙営業術】第29回 包括報酬系・入居系で利益を出している事業所がやっていること!
包括報酬系で何でも屋をやると必ず業績が悪化します
通所介護等の出来高サービスは、1回あたり◯◯円というモデルのため、来なかったら売上無し、来たら売上が上がります。
逆に、包括報酬系のサービス(小多機等)は、月単位の請求なので、月に1回しか来なくてもドカンと定額で売上が上がります。
これらの算定構造の違いから分かる包括報酬系のサービスの特徴は
「訪問・通い・泊まり」などの複合的なサービスが、毎月定額で使いたい放題※である、ということです。
※小多機等の泊まりや、食事代は出来高で請求する場合が多い
飲食店チェーン等で提供されている「食べ放題サービス」と同じ算定構造だと思えば分かりやすいですね👍
これらのような、包括報酬型のサービスで業績を高めようと思ったら
サービス提供を過剰に行わないようにする必要があります。
これは◯◯し放題サービスが、経営を継続させるために欠かせないポイントです!
それぞれの包括報酬系サービスについて、具体的にどのくらいの数字に抑えるべきなのか、どの業績指標を用いて管理すべきなのか
等、皆さんが当該サービスを運営していく上で役に立つポイントを紹介していきますので、最後まで読んで頂ければ嬉しいです。
複合型サービスで重要なのは「サービス活動収益」を管理すること
先述したように、複合型サービスが提供している「包括報酬系のサービス」は、稼働1回あたりの「サービス活動収益」を管理
することが大切です。
サービス活動収益とは、サービスを提供して得られた売上高をサービス回数で割り戻すことで、1回サービス当たりの収益性を
判断することができる経営指標です。
分かりやすく例にあげた「食べ放題サービス」で説明をしますが
1,500円で食べ放題を提供しているお店の1人前が500円の売価だと仮定します。
500円の商品を提供する場合のFLコストは60%が適正値と言われているので、原価費用は300円、粗利が200円だとしましょう。
この場合、店側が通常単価での販売よりも損をしてしまうサービス回数は4人前からになりますよね?
つまり、この単価設定でサービス提供をしているお店であれば、サービス活動収益の適正値は、延提供回数から平均3人前までで、
利益としては、客あたり600円以上を目指す必要がある訳です。
では、初めから単品提供すればいいのに!と思うかもしれませんが
「食べ放題をお得だと感じる顧客」がターゲットですし、店側もそんなお客様の期待を損ねてしまわないように企業努力をする必要が
ありますから、店側の努力の集大成が包括報酬モデルとも言える訳です。
小規模多機能で言えば、ご利用者1人あたりの通所回数及び訪問回数が、通常の地域密着型通所介護と訪問介護のサービス利用料
と比較して大きく乖離しないようにする必要があります。
この観点から見ても、小規模多機能だから何でもすればいいというビジネスモデルではなく、小規模多機能も自立支援を促進し、
ご利用者のできることを増やしたり、機能を維持する観点が必要であると分かりますね。
入居系で重要なのは「ネット利回り」と「空室リスク」を考えて居室単価設定を行うこと
入居系の事業所で重要なのは、居室あたりの利用料設定です。
利用料としては「家賃」「光熱費」「食費」が代表的ですが、これらから得られる年間売上を、運営費を差し引いて、購入価格で割り戻し
て得られた数値をネット利回りと言います。
例えば、購入価格1億円の建物で居室数が20部屋、1部屋/月あたり家賃50,000円、公共料金30,000円、食費50,000円と仮定すると
1人あたりのインカムゲイン(家賃収入)は130,000円、建物全体の月間収益額は260万円となります。
ここから、食費のFLコスト60%と、管理費用を対売上80%とすると月間利益は72万円なので、年間利益は864万円となります。
この金額を購入価格の1億円で割り戻すと、8.64%というネット利回りが算出されます。
このネット利回りは物件の持つ収益回収力を示し、広島県のワンルームだと相場は6.10%程度なので、仮定した施設はかなり利回りが
高くて優秀ですが、同時に利回りが相場よりも高いと空室リスクが大きくなってくるので、相場の利回りを超過しすぎず、
ネット利回りは低くならない値を想定した、建築費用と家賃設定をする必要があります。
また、このネット利回りは債務履行能力も判断できる要素となります。
入居系の施設は、ハードに大きなコストが発生するので、借入先からの融資を資本の大半として投資すると思います※。
※今回の記事では、各省庁の補助金等は考慮しないこととします
仮に、自己資金なしで設備投資資金1億円を返済期間20年、据置2年、元金均等、金利1%で借り入れて投資したとしましょう。
すると、3年目から555万円/年の借入金返済が発生することになります。
この返済を毎年、内部留保していける経営状態で維持しようと思うとネット利回りが5.5%は必要となります※。
※もちろんCF(キャシュフロー)を考慮するとDep(減価償却費)が足し戻されるので、もう少し低くても問題は無いです
このような考え方でネット利回りを管理できると、黒字だけど債務履行が間に合わない状態を防ぐこともできるので、とても
重要ですし、債務履行を考慮した空室リスクを考えるべきなので、利益を出すにはネット利回りを考慮して管理することが重要
だと考えます。
逆に、債務履行を考えず、黒字だからと言って甘く管理していると、プライマリーバランスが崩れてしまい
最悪の場合、債務不履行(デフォルト)の状態となってしまいます。
また、空室リスクの想定も重要です。
空室リスクとは何かというと、ミクロマーケット(局地的な市場)における、平均空室率から、自施設の空室状況もそれと等しく
なる可能性のことを指し、収益性を高めるためには空室リスクを考慮した収益設定をする必要があります。
例えば、当社が位置する広島県福山市では、空室リスクが約2.0部屋あります。
よって、先程仮定した施設であれば、20部屋が定員だけれど、18部屋でネット利回り5.5%以上を上げる必要があると分かります。
そして、20部屋中18部屋の契約状態であれば、入居率は90%なので、毎月2部屋以上の空きを出さないように空室管理を行う必要
がある訳です。
このように、ネット利回り(グロス利回りでは不十分)や、空室リスクを正しく理解して管理することで、経常的に利益性の高い
体質で運営をすることができると思います。
まだまだ、入居系ではEGI(実行総収入)やGPI(総潜在賃料収入)等、恒常的な経営を継続するために把握しておかなければいけない
要素がたくさんあるので、不動産や会計に関する勉強も行ってみることをオススメします!
ここまでで、利益性の高い事業所のハード面・管理・考え方について学んで頂けたと思うので、実際の介護保険サービスを運営
するにあたって役立つ実践的な方法をお伝えしていこうと思います。
ぜひ、最後まで見て活用して頂きたいです。