【サービスの質向上】入浴が苦手な方、嫌な方へのアプローチ
認知症などの影響で入浴が苦手な方、介助を嫌がる方も多くいます。
そのような方には声かけや介助方法を工夫して、できるだけ心地よく入浴してもらえるようにしましょう。
【1】介助の質を高めるアプローチ
【2】服を脱ぐのが苦手な方へのアプローチ
【3】移動や基本動作が苦手な方へのアプローチ
【4】お湯をかけるのを嫌がる方へのアプローチ
【5】洗体関連のアプローチ
【6】湯船の中から立ち上がれない人へのアプローチ
【7】その他のアプローチ
【サービスの質向上】生活不活発病(廃用症候群・過剰介護)の防止
生活不活発病
【1】呼称の変更「廃用症候群」→「生活不活発病」
【2】生活不活発病は「身体面」「精神面」「社会面」で発生する!生活全般での活動低下は、生活不活発病を引き起こし、認知症発症のリスクになる
【4】生活不活発病の原因は①不活発なケア提供、②過剰介護、③無知による不刺激 など
【5】生活不活発病の予防・改善は、「スタッフの意識」「環境」「ケアでの工夫」が必要
【サービスの質向上】生活密着型認知症予防の考え方
なぜ「生活密着型」なのか
今まで認知症予防活動として、さまざまなものが提案されてきました。
なぜここで「生活密着型」認知症予防を提唱するのでしょうか?
その主な理由を以下に3種類挙げます。
<生活密着型の理由>
(1)介護は生活を支援するサービスである
介護は生活を支援するサービスであり、介護の対象となる分野は生活です。
認知症予防でも、介護における認知症予防の場合、中心となる視点は生活となります。
医療であれば、注意機能、記憶機能などの機能が改善すれば目的は達成されるかもしれませんが、介護の場合はそれだけでは不十分で、生活面での改善が求められます。
(2)認知症は高次脳機能障害により生活に支障を来した疾患である
認知症の診断基準は、高次脳機能障害(記憶障害、失語・失行・失認・遂行機能障害など)により生活に支障を来している状態となっています。
このことから、認知症予防では、「高次脳機能障害の改善」及び「高次脳機能障害があっても」生活に支障を来さないようにすることの2つの考え方ができます。
(3)要素のみの訓練では他の生活行為は改善しないことが分かっている
身体を使う行為はすべて、「その行為そのものを反復練習する」必要があります。
イギリスの大規模研究で、計算やパズル、読み書きなどの要素を練習しても、実際の日常生活改善への転化は見られないことが判明しました。
毎日、漢字ドリルや計算をしても、それだけでは日常生活の改善には直結しないのです。
例えば、「筋力トレーニング」や「関節可動域訓練」といった要素訓練のみを何百回実施しても、サッカーや野球は上達しません。
サッカーや野球の上達には、サッカーや野球そのものを練習する必要があります。
認知症の場合も、個別の要素だけでは実際の行為・活動は上手になりません。
要素訓練にプラスして、実際の行為・活動を訓練しなければいけないのです。
改善したい行為を正常に遂行する上で必要な要素を分析し、その要素を訓練した後で実際の行為を訓練する必要があります。
その際、実際の行為訓練は、段階的に難易度を上げていくようにするとよいでしょう。
【サービスの質向上】目標の種類と因子
目標の種類
目標には、「時間的な分類」によるものと「空間的な分類」によるものがあります。
時間的な分類による目標は、「長期目標」、「短期目標」等です。
空間的分類による目標は、「全体目標」「部署目標」「居宅サービス計画書の目標」、「通所介護計画書の目標」などです。
達成までに時間がかかる一つの目標を設定して、それを達成しようとするより、その過程をいくつかの段階に分けて、各段階で目標・期間を設定する「ショートステップ法」のほうが、最終的な目標の達成率が高くなることがわかっています。
そのため、介護、個別機能訓練でも、長期目標と短期目標を立てることが求められています。
全体目標、部署目標も同様に、チームで一つの目標に向かって連携する際、それぞれが役割を明確にし、それぞれの中で目標を設定するほうが、チームとしての目標達成率が高まります。
その際大切なことは、それぞれの部門の目標が全体目標と同じ方向・ベクトルを向いていることです。
【基準・算定要件のポイント】個別機能訓練の評価について
計画との整合性
訓練の流れで出てきた「アセスメント」は、各種情報を収集し、それらの情報を分析して、介護の視点から本人に必要なこと(ニーズ)※ を把握することです。
この際の各種情報収集には、本人からの直接聴取や他事業所からの情報伝達などいろいろな方法があります。
※ここでは、本人の希望・要望とニーズを明確に区別しています。
例えば、アルコール依存症の人の希望を聞いたとき、「お酒が飲みたい」は本人の希望・要望ですが、ケアの視点から本当に必要なこと(ニーズ)は、「お酒を断てるようにする」ことです。
このように現場では、本人の希望とニーズが異なることも多いため、希望・要望(ウォンツ)とニーズは区別すべきです。
評価には以下のようなポイントがあります。
【基準・算定要件のポイント】個別機能訓練計画書類作成の視点
上位計画との整合性
個別機能訓練計画は、通所介護の中の一つのメニューです。
したがって、通所介護が目指す方向性と一致している必要があります。
また、通所介護は、一人の利用者が受けるサービスの中の一つです。
したがって、介護全体の方向性を示す「居宅サービス計画」の方向性と一致している必要があります。
厚生労働省通知では、以下の通り定められています。
個別機能訓練計画の作成にあたっては、居宅サービス計画、通所介護計画又は地域密着型通所介護計画と連動し、これらの計画と整合性が保たれるように行うことが重要である。
(老認発0316 第3号 老老発0316 第2号 令和3年3月16日)
【サービスの質向上】自立支援の視点での入浴訓練の進め方
以下のような流れで入浴訓練を進めることで、自立への意欲を高め、効果的な訓練が実施できます。
入浴介助加算の算定要件には訓練は含まれていません。
しかし、ここでは加算とは関係なく、入浴の自立に必要な機能訓練の一つとして入浴訓練の進め方を述べています。
【基準・算定要件のポイント】通所介護費の算定に係るサービス提供時間
通所介護費の算定に係る「時間」の考え方
通所介護の時間は主に「営業時間」「運営規程上のサービス提供時間」「ご利用者ごとのサービス提供時間」「実際に利用した時間」に分けられます。
ご利用者ごとのサービス提供時間は、「必要なサービスを提供するために必要な標準的な時間を設定すること」と決まっており、一人ひとりの生活状況が違うように、必要なサービスやそれに要する時間がご利用者ごとに異なります。
実際には運営規程上のサービス提供時間と、ご利用者ごとのサービス提供時間は同じ時間設定になっていることが多いです。
しかし、実際には病院受診や急な体調不良のため、その日の利用を途中で中止したり、交通事情などによって送迎に時間がかかり事業所への到着が遅れるなど、計画されたサービス提供時間と実際に利用した時間に差が生じることがあります。
【基準・算定要件のポイント】個別機能訓練計画書作成の注意点
希望欄の記載
本人の希望、家族の希望は、重要な情報です。
それは、そのときにおける本人・家族の心理状態、症状への理解、関心度等を反映しているからです。
例えば、本人に何か希望があるか聞いたときに「特にありません」という場合、
「(夢も希望もないので)特にありません」
「(どうせかなえてくれないのだから言っても無駄なので)特にありません」
「(思いつくことは)特にありません」
「(今、順調にいっていてこのままでよいと思うので)特にありません」
など、その言葉の背景にある感情・心理などでアプローチの仕方も変わってきます。
同様に、家族に『本人の家庭での役割』として何か希望があるか聞いたとき、「何もしてほしくない」という場合も、背景によって家族に対するアプローチが変わります。
「(後からやり直すのが面倒なので)何もしてほしくない」
「(かえってこちらの手がかかるばかりだから)何もしてほしくない」
「(とにかくベッドの上でじっと寝ていてほしいので)何もしてほしくない」
「(動いて転倒でもしたら入院費用がかかるから)何もしてほしくない」
「(何にもできないに決まっているから)何もしてほしくない」
「(今はまだ危ないので)何もしてほしくない」
「(今はリハビリ・訓練を頑張るときなので)余計なことは何もしてほしくない」
「(失敗して自信を失うとかわいそうだから)何もしてほしくない」
本人・家族の希望は、正確にアセスメントできるように、できるだけ本人・家族が表現した言葉で、ポイントが把握できるように記載しましょう。
【サービスの質向上】手続き記憶を引き出す介助
今までにしていた「自分の動き」を自然に誘発する介助をしよう
認知症の方は記憶障害を起こしやすいのですが、記憶の中でも手続き記憶は比較的、後まで保たれやすい記憶となっています。
そのため認知症の介護では手続き記憶を活用する介助、手続き記憶を引き出す介助が有用となります。
認知症の方の介助では、これまで生活の中で何回も繰り返してきた自然な動作を引き出す介助が有効です。