【高齢社会を支える新戦略】経済産業省が「産福共創モデル」で描く地域福祉と産業の共存ビジョン
2025.06.13
2025年5月28日、経済産業省は「高齢者・介護関連サービス産業振興に関する戦略検討会」の最終とりまとめを公表しました。
少子高齢化が急速に進む中、地域福祉課題の解決と産業活性化の両立を図る新たな政策ビジョンとして「産福共創モデル」の推進が打ち出されました。
この戦略は、2025年問題(団塊世代の後期高齢者化)や2040年に向けた超高齢化社会への対応を視野に、介護人材不足・家族介護者の負担増といった現実的課題に対する解決策を提示しています。
公的介護保険に依存せず、民間企業やNPO等が主体となってサービスを展開することにより、持続可能な福祉基盤を構築しようというのがその主眼です。
特に注目されるのが「産福共創モデル」の導入です。
これは、民間事業者と地域福祉機関が連携し、事業性と公益性を両立させる仕組みで、地域課題を解決しながら雇用や経済循環を生むことを狙いとしています。
対象サービスは、介護予防・日常生活支援・療養支援・家族支援など多岐にわたり、保険内外を問わず柔軟な提供体制が構想されています。
また、地域の市場性に応じて3類型のモデルが設定されました。
都市部など市場性の高い地域では、先進技術を活用した実証型モデルを展開し、中規模都市では地元企業との協定による地域密着型の取り組みを推進します。
過疎地など市場性の低い地域では、公的支援と地域プラットフォームを組み合わせた共助体制を構築する方向です。
実現に向けたステップも明確に示されています。
まずは自治体と企業との情報共有を基盤とし、次にインセンティブ設計や制度整備を通じて連携の実効性を高めます。
そして、モデル事業の創出と評価を経て全国展開を図る流れです。
具体的なサービスとしては、配食・家事代行・買い物支援・終活サポートなどの保険外サービスが取り上げられており、こうした活動が家族の介護負担軽減やQOL向上に資することが期待されています。
産業政策と社会福祉政策の融合という新たなアプローチは、地域住民の暮らしを支えると同時に、介護関連サービスの新市場を切り開く契機ともなり得ます。
今後は、各地域での実証事業の展開と制度設計の最適化を通じて、「産福共創モデル」の全国展開が本格化していくでしょう。
高齢社会に立ち向かう国家戦略として、このモデルが地域社会にもたらすインパクトに注目が集まっています。
【情報提供元】
「高齢者・介護関連サービス産業振興に関する戦略検討会」の取りまとめ
https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528002/20250528002.html